軽妙さ

2014.02.15
丹波春秋

 17、18日に行われる柏原厄除大祭。メーンは宵宮の深夜に行われる「青山祭壇の儀」だ。この儀式では、「厄除けの神様」とともに、厄をもたらす「やくがみさん」も降臨するという。厄をもたらす神とはどのような神なのか、浅薄にして知らないが、通俗的なイメージでは貧乏神が思い浮かぶ。▼貧乏神といえば、江戸後期の名僧、仙(せんがい)に面白い逸話がある。あるとき、新築の家に呼ばれて絵を乞われた仙は、筆をとるなり、「ぐるりッと家をとりまく貧乏神」と書いた。家の主人が『何事か』と思った矢先、仙は「七福神は外へ出られず」と続けた。▼機知に富み、軽妙。こんな逸話が仙には多くあったらしい。人として奥が深く、世俗の境地を突き抜けているからこそ、自由闊達(かったつ)な軽妙さがあったのだろう。▼軽妙といえば、作家で故人の江國滋氏の俳句「おい癌め酌みかはさうぜ秋の酒」も最たるものの一つだ。痛みに苦しみ、死の不安におびえながらも、一つの境を突き抜けた明るさがある。芯の強いユーモア精神がある。▼先の仙だが、死に際した言葉は、なんと「死にとうない」だったという。枕辺にいる弟子たちは耳を疑ったが、仙は「ほんまに、ほんまに」と付け加えた。煙に巻くこの言葉も、軽妙の真骨頂と言えなくもない。(Y)

 

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