戦後のベビーブームに生まれた「団塊の世代」なる言葉を創ったのは、堺屋太一氏。かつて高度成長の実戦部隊だった同世代は今、65歳からの高齢期にさしかかったが、これから10数年後まで、人口が減少し経済が停滞する中でどういう最晩年を迎えるのか。同氏はこのほど近未来小説「団塊の秋」を発表した。▼登場人物は恵まれたキャリアの人たちで、つましくなりつつも比較的穏やかな境遇に描かれている一方、じわじわと進む社会環境の変化も示されている。▼東京五輪の直前、2020年4月15日号「毎朝新聞」記事には、「しぼむスポーツ熱、燃えるお祭り気分」という見出しで、「プロ野球の観客数はピークだった2004年から半減し、昨年から8球団1リーグに。ゴルフ場、スキー場も相次いで閉鎖した。五輪の日本選手団には“純血主義”が放棄され、ケニア、ジャマイカ、南米などから国籍を取得した選手が加わっている」。▼団塊世代より少し歳下の作家、高村薫さんは先日、神戸で開かれた大震災記念のシンポジウムで「私たちは今や、経済の縮小をいかにうまく進めるかを考える時期に来ているのでは」と話した。▼相変わらず成長を追い求めることに当座は成功したとしても、決していつまでもは続かないはず。どう対応するかという知恵こそ、喫緊の課題だ。(E)