山間の集落

2014.03.20
丹波春秋

 スイスの山間部を通っていて、傾斜のきつい山のてっぺんの集落までロープウエーが付いているのを随所で見かけた。観光用にしてはどの村も寒村過ぎる。「何故こんな高くつく乗り物を」といぶかっていたが、堀江溢雄氏の寄稿「さあーどうする丹波地域の農業」(本紙1月19日号)を読んで、疑問が解けた。▼それはドイツの話だが、「山頂が国境だから、人が住まいをしていないと移動する。厳しい条件で生産性が乏しい土地でも、集落を形成して国境を守る必要がある」。だから国民の合意により手厚く補助されているというわけだ。スイスも恐らく同じ理由でロープウエーまで付けているのに違いあるまい。▼このたびの、圧倒的な軍事力を背景にしたロシアのウクライナへの介入の動きを見るにつけ、少なくともこの点では、陸に国境を持たない国の平穏さを思う。▼とは言え島国日本とて、山間の集落が無用なわけでは決してない。山の向こうから攻めてくる敵はいなくとも、目に見えない敵は確かにいる。山村がなくなれば山の荒廃が進み、やがて温室効果ガスの増加がじわじわと環境を破壊させる。▼強力な支援が必要なのは明らかだが、目に見えぬ敵だけに、国民の合意を得るには、堀江氏も示唆する通り、受ける側がどのように危機感を持ち、支援策に安住しないかが肝要だ。(E)

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