村の伝統行事、今年で最後に 弥勒堂の「お当」行事 篠山市今田町上小野原

2014.03.27
ニュース丹波篠山市

写真・当元の板谷弘さん (右) から、 モッソ飯を受け取る谷川自治会長=篠山市今田町上小野原の弥勒堂で

 篠山市今田町上小野原自治会 (谷川隆司会長、 62戸) が3月21日、 同集落の弥勒堂で 「お当 (おとう)」 の行事を開いた。 毎年春分の日に開いている女人禁制の伝統行事。 同行事を取り仕切る 「当元 (とうもと)」 と 「当組 (とうぐみ)」 の2人が、 同集落の住吉神社の氏子を弥勒堂に招き、 「この一年、 みんなで神社を守っていきましょう」 と、 酒宴を張った。 しかし、 働き方や生活様式などが大きく変貌した昨今、 年々参加者が減少し、 継続が困難となってきたため、 「お当」 の開催は今年で最後になった。 長い間、 脈々と受け継がれてきた集落の行事がまた一つ幕を下ろした。

 今に残るお当行事の最古の記録は、 当元や当組を務めた人の名前を記した大正元年 (1912年) の台帳。 しかし氏子によると、 それよりもはるか前から、 お当は行われていたという。

 正午ごろ、 氏子9人が弥勒堂に参集。 「三連休の初日。 やっぱり集まりが悪いなあ」 などと言いながら、 お当の行事が始まった。

 当元がこの日の朝にこしらえ、 堂内の弥勒菩薩座像に供えていた 「モッソ飯」 を、 当元が箸で少量ずつ取り分け、 氏子たちに配って回った。 モッソ飯は、 ご飯を木型で押して約10センチ四方、 厚み約3センチの立方体にかたどった供物。 氏子たちはモッソ飯を手のひらでありがたそうに受け取るとすぐに食した。

 引き続いて小、 大、 中の順に大きさの異なる朱塗りのさかずきでお神酒を回し飲みし、 お当料理の大根と里芋、 焼き豆腐の煮つけと、 こんにゃくとにんじんの豆腐の白和え、 酢ごぼうの6品を会食した。

 当元と当組の任期は1年。 昨年まではこの場で、 一升ますのコメの中に隠したくじを引き、 来年の当番を決めていた。

 最後の当元を務めたのは板谷弘さん、 当組を務めたのは板谷伸一さんと対島政一さん。 現在80歳で、 30代の頃にも当元を務めた板谷弘さんは、 「大変な役だが、 一生に一度か二度しか経験できないので、 光栄に感じる。 昔は大勢の参拝者があり、 モッソ飯をいただきにやってくる村人が弥勒堂の前にずらりと並んだもの」 と懐かしみ、 「昔と大きく社会構造が変化した今の時代を思うと、 よくぞここまで続いてきたとも思える。 伝統の行事がなくなるさみしさはあるが、 時代の流れには逆らえない」 などと複雑な心境を語っていた。

 

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