死について考える

2014.04.19
丹波春秋

 遠藤周作氏の著書『死について考える』(1987年発行)に、なるほどと感心するくだりがある。末期がんの人から「死ぬんでしょうか」と聞かれた際にどう答えるのがいいか、という聖母病院の看護婦長さんの話だ。▼若い看護婦だと、「何言ってんのよ。大丈夫」と答えてしまいがちだが、感覚が人一倍鋭くなっている患者は看護婦らの目や顔色、言葉の調子で見抜いてしまうので、そんな慰めは役に立たない。いいのは、「本当に苦しいでしょうね」と、患者の苦しみを理解すること。▼さらに「いずれ私だって、おばあちゃんと同じようになるんですよ」と話しかける。あなただけが死ぬのではなく、元気にしている私もやがて死ぬことを示すことだという。患者の孤独感を、連帯感によって和らげるのだ。▼13日付の本紙篠山版で、今田小学校1951年度卒業生が行った追悼式の記事が載った。今田町の和田寺に同級生たちが集い、亡くなった友達の子ども時代の写真を祭壇に並べ、手を合わせたという。▼追悼式を提案した同寺の武内普照住職は取材に、良寛の句といわれる「散る桜残る桜も散る桜」を引き合いに出し、「人は皆、等しく死を迎える。あの世に行っても同級生で集まりたい」と答えていた。同級生ならではの連帯感に、物故された方も喜ばれたに違いない。(Y)

 

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