「してあげる」

2014.05.03
丹波春秋

 元佐治小学校校長の足立一幸氏が生前に自費出版された本にこんなエッセイがある。「お花に水をあげる」「犬にエサをあげる」という言い回しが耳につく昨今、「自分の子どもに~してあげる」も平然と使われている。この表現は本当にいいのかどうか疑問を持つ、というものだ。▼自分の子どもに対して「してあげる」という言い方に眉をひそめる人は少なくない。作家の曽野綾子氏もその一人で、「親が子供に何かをする時には『してやる』と言わねばなりません」とする。▼さらに、「してあげる」と言うのは、親が敬語を使えないことの証であり、親子の位置関係が乱れていることの表われと言い切る(『人間の基本』)。共鳴する人は結構いるだろう。逆に反論したい人もいよう。足立氏も先のエッセイで、職場の同僚に聞いてみると、50代は「してあげる」になじめず、30代は違和感がないと答えたと書いている。▼埼玉県立の高校でこの4月、新1年生の担任教諭が勤務先の入学式を欠席し、自身の子どもの入学式に出席していたことが分かった。インターネットを中心に教諭らに対する批判が集中したが、一方で擁護の意見も巻き起こったという。▼「してあげる」の言い方が市民権を得ようとしている様相を反映した今日的な出来事だと思う。さて、明日は「こどもの日」。(Y)

 

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