「人になる」糧

2014.05.31
丹波春秋

 「人は人によって人になる」とは、神戸市の教育理念だ。確かにその通りだと思う。まず親、そして学校の先生、友達、地域の人達。大人になっても、さまざまな人に出会い、人としての成長の糧を得る。ただ感化を受けるのは生身の人間だけに限らない。人が生きた足跡を記した伝記も、人になる糧となる。▼前号でお知らせしたが、丹波新聞社の企画・制作で、丹波地方にゆかりのある人物34人を紹介した「丹波人物伝」を発行した。多士済々の魅力的な人物たちだ。▼柏原藩の儒者として活躍した小島省斎は、貧しい生い立ちの中で苦学し、成人になってからも向学の志を捨てなかった。そんな省斎の教えを受けた田艇吉は阪鶴鉄道の開通などに尽くし、艇吉の弟の健治郎はわずか12歳のとき、江戸の町を自分の目で見たいと、歩いて江戸に行った。▼早くに父を亡くした下中弥三郎は、子ども時代から家業の陶業に精を出し、のちに平凡社を創業。父親の残した多額の借金のため、生活を切り詰めながら苦学した佐々井信太郎は、のちに二宮尊徳について学び、尊徳と同様に貧しい村を救った。国文学者の三浦圭三は、小学校を卒業しただけの学歴で大学の教授となった。▼「丹波人物伝」は、丹波、篠山両市の学校に寄贈させていただいた。「人になる」材料になれば幸いだ。(Y)

 

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