「野球がうまくなりたければ、宿題をちゃんとすること」。野球少年にそうアドバイスしたのは、かのイチロー選手だ。野球の上達と宿題。関係がないように思えるが、イチローによると、そうではない。宿題は普通、嫌なもの。嫌なことをしっかりするのも能力であり、その能力は必ず後で生きてくるという。▼前号に載った柏原高校サッカー部の記事が興味深かった。同部では整理整頓をする、遅刻をしないなど、日常生活の規律を重んじているという。強豪の市立尼崎を破った試合後、主将が部員に語ったのは「近く始まる中間テストで恥ずかしい点を取るのはやめよう」だったとか。▼整理整頓をし、遅刻をせず、勉強をおろそかにしない。これはイチローの言う宿題と合わせて、学生にとって当たり前のこと。当たり前のことに決して手を抜かず、見事なまでにこなす。「凡事徹底」という教えそのものだ。凡事徹底は、人としての根っこを強くする。▼試合に出場する選手は、監督ではなく、部員たちが決めるという同部の方針も興味深い。それが実行できるのも、部員たちが、部員それぞれの特徴や力を見極めているからだろう。▼孫子の有名な兵法「彼れを知り己れを知らば、百戦してあやうからず」の「己を知らば」を実践している。同部の今後に目が離せなくなった。(Y)