ワールドカップ・サッカー

2014.06.19
丹波春秋

 ワールドカップ・サッカーで、決勝進出が険しくなった日本以外に、筆者がもう1つ注目するチームは、唯一初出場のボスニア・ヘルツェゴビナ。強豪アルゼンチンとの初戦は、なかなか善戦した。▼この国は20余年前、内戦続きで毎日マスコミで報じられた。ユーゴ社会主義連邦共和国が崩壊して、日本の本州ほどの国土がいくつもの民族国家に分裂。ボスニアのほかセルビア、クロアチア、スロベニア、マケドニア、モンテネグロなど群小の国が独立したが、それぞれに内紛を抱え、中でもセルビア人とクロアチア人が深刻に対立するボスニアではイスラム教徒もからんで、20万人が殺し合ったと言われる。▼95年の停戦後もなお3つの勢力がいがみ合い、サッカーでも協会長が3人いて、FIFA(国際連盟)からイエローカードを突き付けられた。この時担ぎ出されたのが、日本チームの監督もしたオシム氏。どの民族からも距離を置き、公平な人柄でまとめ役を果たして、チームは欧州代表の一角に食い込んだ。▼16日、リオのスタジアムはアルゼンチンの水色のユニホームで埋まり、青と黄のボスニア応援席は大海の孤島のようだったが、米国などに避難した元住民らも加わって、一体感はこれまでになく強まったことだろう。オシムは「決戦を是非日本と」と言っていたのだが。(E)

 

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