ナショナリズム

2014.07.31
丹波春秋

 カフェでカプチーノに砂糖を入れようとするのを、隣に居合わせた見知らぬブラジル人女性が制し、身ぶり手ぶりで「一口飲んでからにしなさい」と注意してくれた。最初から砂糖が入っていて相当甘かったのだ。―ワールドカップの取材に行った吉田誠一記者が現地で受けた数々の親切について、「この優しさはどこから来るのか」と自問している(日経5日号「フットボールの熱源」)。▼しかし春秋子は、決勝のドイツ―アルゼンチン戦で別の感慨を持った。アルゼンチン・サポーターの圧倒的な声援に対し、ドイツ側もさほど負けていないのを、解説者が「ブラジル人がついてますからね」と話したのだ。▼「4位になった自国に代わって隣国に頑張ってほしい」と思うのでなく、逆に優勝させたくないらしい。かつては互いに戦ったこともあり、今なおぎくしゃくしている両国の関係を知った。▼親ロシア派と戦闘状態のウクライナ東部。旅客機撃墜に強い容疑のかかる親ロシア派の肩を持つかのようなプーチン大統領の人気がロシア国内で上昇していると聞いて、唖然とする。▼春秋子もロシアでウクライナで、少なからぬ愛すべき人に出会ったことを想いだす。しかし国家が絡むと、話は単純ではなくなる。ナショナリズムとは何なのか。将来のあるべき形は。改めて考えさせられる。(E)

 

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