日中平和友好条約締結(78年)後に小平副総理が来日した際、園田直外相が中国漁船が尖閣諸島に入ったことに言及すると、氏は「あれは偶発事故。もう絶対やらん」と答え、「この問題で我々の世代は解決を見つけていないが、次の世代は必ず見つけるはず」と述べた。▼園田氏は「あの時氏の口から“中国のもんだ”などと言葉が飛び出せばおしまいだったが、“今まで通り放っておけ”という。裏返せば、日本の実効支配をそのままにしておけばいいということで、私はたまりかねてもうそれ以上言わんで下さいと氏の両肩をぐっと押さえた。▼―「日本の国境問題」(孫崎亨)から孫引きした園田氏の回顧録。尖閣問題の「棚上げ」は、72年の日中共同声明時の田中角栄・周恩来会談以来、中国政府が一貫して言い、日本側もその言葉こそ使わないものの、事実上同意してきた。▼ところが、日本政府による「国有化」以来、中国政府が硬化し、「日本のもの」「中国のもの」がもろに衝突するようになった。▼先日、海江田民主党代表の訪中の際、共産党序列5位の劉雲山氏が「良い解決方法は次の世代に任せては」と話したというNHKニュースに「棚上げ論の復活か」と注目したが、海江田氏の反応は甚だ鈍かったようで、翌日の新聞も読売以外は全く核心に触れていない。(E)