人間時間

2014.11.15
丹波春秋

 古民家再生を手がけている篠山市の建築家、才本謙二さんの随想を読んだ。丹波地方ゆかりの人ら26人が執筆し、先ごろ発行された本「食と農と里山」に収録されたものだ。才本さんも執筆者の一人だった。▼人はなぜ古民家に懐かしさを覚えるのか。それは「人間が素直に暮らせる『人間時間』があるから」という。人間をはじめそれぞれの生きものにはそれぞれ違った時間が流れている。人間の中に流れている時間が「人間時間」であり、古民家には、人にとって心地よい人間時間が流れているという。▼時間に追われる気ぜわしい日々を過ごしていると、時間から解き放たれたひとときを持ちたいと思う。それは人間時間をかき乱された反動だろう。「速いことはいいことだ」とばかりに何につけても「速さ」を求め、「速く」とせき立てられる環境は、人間的ではない。▼「駆け足!駆け足!駆け足!いつまでこの世界の駆け足は続くのだろうか」。文筆家の相馬御風が、スピード社会の非人間性を嘆いたのは昭和初期のこと。社会のスピードは当時と比べて何倍にも増し、人間時間からますます隔たっている。▼折から吹いた衆議院の解散風。ただでさえ慌ただしい師走での総選挙。政治家が「常在戦場」と称する政界には、人間時間とは異なる時間が流れているようだ。(Y)

 

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