文語調の歌

2015.03.14
丹波春秋

 「卒業式の歌」と聞いて思い浮かぶ一つが「仰げば尊し」だが、文語調で意味が難しいとあって最近、歌われなくなっていると聞く。確かに誤解しやすい歌詞がある。▼「仰げば尊し わが師の恩。教えの庭にも はや幾年(いくとせ)。思えばいと疾(と)し この年月。今こそ別れめ いざさらば」。例えば「いと疾し」。字にすれば「とても早い」という意味であることが理解できるが、耳で聞くだけだと「いとしい」と誤解し、「思えば愛(いと)しきこの年月」と間違えやすい。▼「今こそ別れめ」もそう。これは「さあ、今別れましょう」という意味なのだが、「今こそ別れ目」と読み取り、別れる時という意味に勘違いされることが多い。かくいう筆者もつい最近まで「別れ目」と思ってきた。▼唱歌「故郷」にも、似たような誤解がある。「兎追いしかの山」を、「兎美味(おい)しい」と思い込んでいた人は少なくないという。かくも誤解しやすい文語調の歌だが、良さもある。大人になると、歌に託された情緒がしみじみ味わえることだ。▼丹波地方の出身者の会に出席すると、全員で「故郷」を歌うことがある。陶酔しているように歌っている出席者は少なくない。子どもの頃にはピンとこなくても、年を重ねると、歌詞が心にしみる。本物が持つ味わいというべきか。(Y)

 

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