足利3代将軍義満が円融天皇の勅命を受けて、 永徳2年 (1382) に創建した曹洞宗の名刹である。 室町時代の最盛期には、 天皇、 将軍そして関白と深い関係を持ち、 丹波はもとより、 但馬、 播磨、 摂津の国々にかけて権勢を広めた中本山だ。 丹波もみじ三山の一つとして、 秋には紅葉が美しい。
ここに中井権次の彫り物がある。 天保年間 (1840年ごろ) の再建時に彫刻がしつらえられたようだ。 メインの彫刻の竜が梁と梁の間のやや狭い所にあるのが残念な気もする。 しかしながら、 その他の脇役である唐獅子や獏などが体をひねる様にして、 躍動的である。 特に麒麟 (足が馬で頭のてっぺんに角がある) の聖獣が目を引く。 虎もぎょろりと大きな目をむいている。 各聖獣の下に 「栢原」 とだけ銘が入っている。 当時栢原の彫り物師と言えば、 言わずもがな、 6代目中井権次橘正貞しかいなかった。 彼の自負の表れである。
元高校教諭 岸名経夫