「都構想」

2015.05.20
丹波春秋

 「高津の宮の昔より よよの栄を重ねきて…東洋一の商工地…力ぞ強き大阪市」―大正10年に作られた大阪市歌。前の新聞社の駆け出し時代、小学校の卒業式で歌われるのに驚いた。これほど住民に浸透した県や市歌は筆者の知る限り、他には長野県歌「信濃の国」のみである。▼橋下さんがこれを歌っているかどうかは知らないが、「力ぞ強き大阪」を目ざした「都構想」は、この歌に一層愛着度を持つであろう60歳代以上層の抵抗で潰え去ったのではないか。▼年賀状のたびに「都構想は絶対許せません」と書いて来る元市幹部がいたが、「全国の大都市のリーダーたるべき大阪市をなくしてはいけない」という気持からだったろう。しかし大阪市は今や人口で横浜にはるかに抜かれ、大阪府は経済集積度で愛知に迫られて、リーダーの座は危うい。大阪を東京と同じ行政制度にすることでそれが解決するのか。▼筆者は昭和50年代に「府市協調」のテーマで、港湾、水道、交通の一元化や府立・市立両大学の統合などを提唱したことがあるが、40年経ってようやく大学統合が協議中というにとどまっている。▼府市の幹部らが意地を張りあうのでなく、実のある協調を探ることこそ肝要である。かつてない高投票率、1万票の僅差、全国からの注視。関係者はこれを重く受け止めてほしい。(E)

 

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