季節外れだが、クリスマスの話題。元文化庁長官の河合隼雄さんが、子どもの頃の思い出を書いている。ずいぶん昔だが、河合家にはサンタクロースがやって来て、隼雄さんら男ばかりの6人兄弟にプレゼントをしたという。▼子どもが寝ている間に枕元に置いていくのではない。家のあちこちにプレゼントが隠されていた。25日の朝、子どもたちは5時頃から起き出し、プレゼントを探し回った。「あのときの興奮と感激はいまだに忘れられない。…見つかったときの感激、それは幼い子どもの心を大きくゆさぶるものであった」とエッセイにある。▼ある年、子どもの間で父親にはどうしてプレゼントが来ないのかが話題になった。父親は子どもを教会に連れて行き、「自分にも届けて」と祈った。すると、その年のクリスマスには、父親にもプレゼントがあった。無邪気に喜ぶ父。子どもたちも歓声をあげたという。▼茶目っ気のあるやさしい父親像が浮かぶが、普段はそうでもなかったようだ。「本分を尽くす」が口癖で、歯科医として懸命に働いた父。隼雄さんは、「ピチッと生きている親父がおるということは、なんとなくずっと怖かったですね」とも書いている。▼畏怖(いふ)させる存在感と、一方でのやさしさ。父親の模範といえる。きょうは「父の日」。(Y)