ソプラノ歌手 大槻朱里さん(丹波市春日町野村)

2015.07.26
たんばのひと

「音楽が好き」を大切に

 6月に丹波の森公苑で自身初のソプラノリサイタル「うたは風に乗って」を開いた。本番前、舞台袖から客席を眺めると、立ち見が出るほどの超満員。「感極まって泣きそうになった。貴重な時間を割いてくださり、ただただ幸せ」と振り返った。歌のほかにも進行や曲解説も自身で行い、1時間半の舞台を務め上げた。

 歌に興味を持ったのは、春日中学校1年生のとき。丹波市内にあったミュージカル劇団を紹介してもらって入団。特に「歌うこと」に心をつかまれたという。「声色ひとつで多くの表現ができる。新しい曲に挑戦する喜びでいっぱいだった」と言い、次第にのめり込んでいった。柏原高校を経て、国立音楽大学演奏学科声楽専修に進学し、オペラを中心に学んだ。

 卒業を間近に控えた大学院2年の2011年3月11日、福島県いわき市への卒業旅行中に東日本大震災に遭遇。乗っていたバスは大きく揺れ、隣にいた友人に思わずしがみついた。道路が裂けていく瞬間を目の当たりにし、「すぐさま、ただ事ではない地震だとわかった」と話す。近くの小学校体育館に避難すると、人であふれかえっていた。支給された毛布にくるまったが、寒さと恐怖から震えて一夜を明かした。

 震災以降、復興応援ソング「花は咲く」と童謡「ふるさと」を歌うときは特別な思いになるという。「多くの人の思いをくみながら歌っています」と語る。

 今後も各地のコンサートで歌声を届けたいという思いが強い。次のリサイタルは縁があれば、という。「ぜいたくな道楽と言われることもある。でも自分の気持ちを大切にしたい。音楽が好き」。29歳。

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