他山の石

2015.07.22
丹波春秋

 ギリシャの財政破綻は、EU(欧州連合)が支援する方向でひとまず回避されそうだが、なお問題はくすぶり続けるだろう。思えば野口の女子マラソン優勝で沸いたアテネ五輪から11年。すでにその頃から同国はおかしかった。▼EU加盟の信用で国債をじゃんじゃん発行し、五輪の競技場ほか新空港や高速道路をどんどん建設。しかし終わると会場は閑古鳥が鳴き、廃墟と化す所も。維持費や借金ばかり膨らみ今日の危機を招いた。▼これは決して他国だけの話ではない。ギリシャ政府の借金は国内総生産の1・7倍。日本ははるかに多い2・5倍。貸し手の大半が自国民なのは良いとして、それとても富の源泉だった貿易収支が赤字に転じていることを考えると、決して楽観は出来ぬ。▼東北の被災地での膨大な量の復興工事に加えて、国中に伸びる新幹線、高速道路、そして東京五輪用の新国立競技場のバカ高い建設費。国民の強い批判で政府は設計やり直しを決めたが、2500億円を1000億ほど減額出来たとして、それでもロンドンが800億円、派手だった北京でも500億円だったから、断トツの額。▼「本当に金持ちね」といぶかる外国から後世、「あの時やはり、 ギリシャを他山の石にしていなかったんだ」と憐れまれることのないよう切に祈る。(E)

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