終戦前日の深夜、「本土決戦で聖戦続行」と唱え反乱軍となった若手将校らの動きを描いた映画「日本のいちばん長い日」(原田眞人監督)。旧作(1967年、岡本喜八監督)が、8月15日正午まで24時間の官邸と宮城内、陸軍の動きにきっちり焦点を絞ったのに対し、新作は別のことも織り混ぜようとしたからかその分、緊迫感は薄れた。▼役所広司(阿南陸相)も山崎勉(鈴木総理)も松坂桃李(畑中少佐)も熱演しているが、それぞれ三船敏郎、笠智衆、黒沢年男に比べ、やはり何かが足りなく感じる。▼それをカバーしたのが、本木雅弘の昭和天皇。旧作(松本幸四郎)は背中と声がわずかに出ただけだったが、本木は御前会議はもとより侍従らとの会話、植物採集等々、我々下々が普段知り及ばない場面までふんだんに登場した。▼象徴天皇制となった戦後が、ひたすら「御真影」を仰いでいた戦前より国民にとってはるかに幸福なのは万人が認めよう。あの時、「国体護持が出来なければ日本は滅びる」と、逆賊覚悟で戦争終結阻止のために決起、あえなく失敗し自決した畑中少佐らは、今日の繁栄をどう見ているだろうか。▼尤も、それは70年経った客席からだから言えることではある。館内は筆者と同年輩以上の人が目立った。是非若い人達に観てもらいたい。(E)