芸術文化雑誌「紫明」

2015.09.12
丹波春秋

 かつて丹波焼を高く評価した民藝運動家の柳宗悦は、「利」を得ることを求めて作る器は「美」から遠ざかると説いた。そんな柳とゆかりのある篠山市の丹波古陶館から芸術文化雑誌が発行されている。▼『紫明(しめい)』といい、丹波古陶館内の「紫明の会」が年2回発行している。再来年には創刊20周年を迎える。先ごろ神戸の文化団体から表彰を受けた。柳の説を意図的に実践しているわけではなかろうが、利益を度外視した発行姿勢を貫いている。▼大学教授や美術館長、アーティストらから寄せられた書き下ろしの原稿を収録。毎号2000部を発行し、うち1000部は全国の図書館や美術館などに寄贈している。▼「基本的に文化は採算ベースで考えるものではない」という編集・発行方針に、執筆者には、『原稿料はいらない』というほどの気持ちで参画する人や、次の執筆者を紹介する人もいるという。地方からの文化発信に利益を度外視して取り組む心意気に共鳴されたからであろう。▼「利益」。一般に「りえき」と読むが、「りやく」と読まれた歴史の方が長い。読み方でまったく意味が異なる。「りやく」よりも「りえき」を重んじる現代だが、『紫明』は、利益優先でないからこそ、執筆者の協力が得られるというご利益を受けているのかもしれない。(Y)

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