丹波の色をデザインに
「そこに在る物語」をコンセプトにしたファッションブランド「にいろ」を展開している。シロツメクサやキンポウゲ、夏野菜など、身近にある植物をイラスト化し、それを柄にした色鮮やかなカットソーやタイツ、風呂敷などを製作している。
もともと絵を描くことに興味がなかった。「中学生のとき、美術の成績も良くなかった」と笑う。氷上高校時代、趣味もなく、漠然と将来について焦っていた中、何となく遊びで始めたのが絵を描くことだった。
パソコンのお絵かきソフトで遊ぶうち、デザインの世界に引き込まれた。当初は漫画の模写を楽しむ程度。それが次第に「デザイナーになる」が目標になった。高校2年の終わりから多可町の絵画塾に通い、大阪芸術大学に進学。卒業後は、大阪でデザイナー兼イラストレーターとしてスタートを切った。
活動の中で、キャンペーン用のデザインやイラストは、時期が過ぎれば使われなくなることに疑問を感じるようになった。「自分の作品が捨てられていくようで、やりきれなかった」と話す。「都会じゃなくてもクリエイティブな仕事はできるはず」と考え、約3年前に帰郷。以降、観光や飲食店のパンフレットなど、ずっと愛着を持ってもらえる作品作りに励んでいる。
「にいろ」を立ち上げたことで、ようやく“自分のデザイン”が確立できたという。「にいろ」を漢字で書くと「丹色」。自身の個性と丹波にある色を重ね合わせてデザイン化し、「人から人」「丹波から街」へつなげたいという思いを込めている。
「丹波には、素敵なものがたくさんある。デザインを通じて形にし、それを発信していきたい」。29歳。