ふるさとを誇りに
(くろかわ じゅんいちろう)大阪市在住
1961年(昭和36)篠山市古市生まれ。県立西宮高校、大阪大学工学部土木工学科卒、同大学院工学研究科修了。86年建設省(現国土交通省)採用。在サウジアラビア王国大使館二等書記官、都市局下水道部公共下水道課長補佐、水管理・国土保全局防災課災害対策室長などを経て2014年から現職。
近畿地方整備局は、近畿2府4県と福井県、三重県の一部を管轄。河川部は淀川、由良川など国直轄の10河川のほか、府県管轄の河川についても要望を受け、整備に取り組む。
篠山で生まれ、幼稚園に入園するまで生活したことで、丹波のことがいつも頭にある。「初めての勤務地の近畿で、昨年7月に赴任してほぼ1カ月後に起きた、市島を中心とした丹波市の豪雨災害には驚いた。平穏な地域と思っていたのでショックだった」と言い、災害の翌日に現地入りした内閣府調査団の案内役を買って出た。「雨の降り方が変化してきている。しっかりとした河川や砂防などの施設整備をはかる必要がある。住民自身もふだんから命を守る、助け合いの意識を高めておきたい」。
紀伊半島と、篠山市と大阪・京都府との府県境にある「深山(みやま)」の雨量レーダーが、リアルタイムで雨の降る場所や量を整備局に伝える。「アメダスよりも精密」という。
高校時代に読んだ長編小説「高熱隧道」の影響で、「人が幸せになる仕事がしたい」と思い、土木の道へ。「最近は、治山、治水事業のなかで、環境という考え方が注目される。但馬の円山川改修による河床切り下げで、コウノトリの餌場を作る工夫も見られ、同じような災害復旧を進める丹波地域の参考になるのでは」という。
「西宮の小学校時代には、夏休みに母の実家のある篠山で過ごした。古市から見内や真南条まで歩いて遊びに行ったこともある」と懐かしそう。今も休日に訪ねる。デカンショ節をテーマにした日本遺産認定で、ふるさとを一層誇りに思う。「各地を歩いた経験が役立てば」と優しい眼差しを向けた。