自然の魅力伝えたい
「多様な動植物が息づく環境をつくりたい」「スギやヒノキの深緑一色の森ではなく、四季折々、いろんな姿や色を見せてくれる明るい森にしよう」と、長年、一人でこつこつと私有地の森の手入れをしている。今では約50種もの木々が成長。キツネやタヌキなどの獣や、さまざまな昆虫、草花が姿を現すにぎやかな里山になり、近隣住民らの憩いの場にもなっている。
22年前、自宅脇にある約20の小高い台地に広がる森の手入れを開始した。以前は、スギやヒノキが林立し、そのすき間を竹やつるが覆い尽くす、うっそうとした場所だった。ひっそりと息づいていた落葉樹はそのままに、スギやヒノキ、竹はすべて切り払い、まずは林床に光が届くようにした。「森は手を入れたら入れた分だけ応えてくれる」。次々といろんな種類の草木が芽吹きはじめ、年を追うごとに生息する動植物の数が増えていった。
物心ついたころから自然が好きだった。鳳鳴高校卒業後、就職した神戸の酒造メーカーでは山岳部を創部。国内の数々の名峰に足跡を残した山男でもあった。そこで培った体力や技術を生かし、現在、さらに3カ所で里山整備に汗を流している。作業中、「おっちゃん」と駆け寄って来る近所の子どもたちと野イチゴを食べたり、草木や生き物の話をするなどして、和やかなひと時を過ごしている。
「野山を駆け回る子どもたちの元気な姿とにぎやかな声に心が癒される」とほほ笑み、「この里山環境を維持していくためにも、多くの人に身近な自然への関心を持ってもらえるよう、この場所で自然の魅力を伝えていきたい」。73歳。