「自信持って特産栽培を」
雲海を収めた写真集「丹波篠山 霧海」を自費出版。霧がつくる海の美しさではなく、その乳白色のベールによって、特産の黒大豆や山の芋、大納言小豆がはぐくまれていることを伝えようと撮影したもので、「こんなに良い条件のもとでつくる特産物は絶対においしい。生産者は、そのことに自信を持って栽培してもらえたら」と呼びかける。
A4判18ページの写真集には多紀連山の御嶽、小金嶽や高城山から撮影した写真を掲載。「見事な霧海 この霧の中には、篠山人の確かな営みがある」「朝日はいつも突然昇ってくる 橙色の陽光が霧の中をさまよっている」などの情景や、「10月上旬。独特の甘みとコク、丹波篠山黒枝豆が旬を迎えます」など時々の特産の様子も添えた。
元農協職員として特産物のPRパンフレット制作などにかかわってきた。最高級の特産を生み出す自然環境を写真で表現しようとしたときに、篠山盆地の特徴である霧海の存在に着目。「太陽と霧があって、特産が熟成し、良いものができる」と、PRに霧海を使い始めた。
初めてのショット以来、約30年にわたって毎年、特産物の生育・収穫期を迎える10、11月の早朝に登山。単に霧海を撮るだけでなく、ドウダンツツジや樹影を入れるなど構図にもこだわり、朝日のタイミングが合わなければ撮影せずに下山することもしばしばある。
「写真を撮るのが上手な人からすれば、ダメな写真に思われるだろうけれど、霧海ではなく、その下にある特産や自然の大切さが伝われば」
相棒は、フィルムカメラの名機「ニコンF4」。悩みはフィルムが手に入りにくくなったこと。74歳。