オバマ大統領

2016.06.02
丹波春秋

 「腕白坊主が2階の窓から小便をしていたら、通りかかったおじいさんが『馬鹿野郎!長州の方に向けてせんかい』と怒鳴ったそうです」。福島にいた頃、親しかった大学教授(大阪出身)が、会津で聞いたと話してくれた。▼恐らく作り話と思うが、辛い目に会わされた恨みは100年以上経っても消え難かろうということはよくわかる。オバマ米大統領を迎えた広島市民にも同じ思いがあったことだろう。▼にもかかわらず、被爆者団体代表の91歳の坪井さんが笑顔で握手するシーンは感動的だった。オバマ氏には折鶴の演出や、練りに練った美辞麗句があったが、率直に言ってうわべを滑っている感もぬぐえなかった。本人の意向はともかく、原爆資料館の見学時間がたった10分間というのも物足りない。▼「数々の資料を観て、原爆投下が愚かなことだったと改めて痛感した。この体験をもとに、自分の生涯をかけて核廃絶に取り組みたい」くらいは言ってほしかった。しかしそうは言えない国家元首の立場も理解出来なくはない。▼人は相手から怒りをむき出しにされるよりも、ぐっと抑え込んで静かに接しられた方が、はるかにこたえるものだ。オバマ氏もきっと、万感の思いを抱いて帰国したはずである。日本の我々もまた常に想像力を研ぎ澄ませておきたい。(E)

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