岩手県の大震災被災地への読者ツアーで訪れた陸前高田市。1年前は土砂を運ぶベルトコンベヤーが市内を縦横に走り、SF映画の異星の世界のようだったが、ほとんどが撤去され、最高8の地盤かさ上げが中心部全域に広がっていた。▼確かに復興は目に見える形で進んでいる。「でも以前とはまるで違った町に、どれだけの人が戻ってきてくれるでしょうか」とガイドの實吉義正さんはいぶかる。▼リアス海岸の車窓は山陰からぽっと海岸が現れ、また山、海、山、海の繰り返し。どの津も浦も例外なく新道、かさ上げ、防波堤の土砂やコンクリートの光景をさらしている。膨大な数のダンプに作業員、そしてお金。土建国家の前途が危ぶまれさえするが、しかし、必要なものは必要なのだろう。▼震災直後に訪ねた大槌町の小学校体育館の避難所で会った小国ヤスさん(84)、長峰登喜子さん(78)らに、同じ場所に建った仮設住宅で5年ぶりに再会。2人とも大変元気で明るく、当時よりむしろ若返ったように見えた。宅地造成が進む近くの場所で、1、2年内に戸建ちやアパートに入居する見込みがついたという。▼ヤスさんが「これで11冊目」と大事そうに差し出したノートには全国から来た人たちのメッセージがぎっしり。1200人以上という。「よかったね」と書き添えた。(E)