「点訳は私の生きがい」
長年にわたって視覚障がい者の社会参加のため、篠山市や社会福祉協議会の広報紙、童話や小説などを点字翻訳するボランティアとして、社会福祉の向上に尽くしている。
旧丹南町議会議員や同町社会福祉協議会会長などを歴任してきたが、70歳を前にすべての役職から降りた。時間ができたため、「60歳からやってきたパソコンを生かして何かできないものか」と考えたとき、知人からの誘いもあってたどり着いたのが、点訳本を作る点字翻訳だった。
1995年に点訳講座受講後、受講者約20人とともに「丹南点訳アイ・愛サークル」を結成。初代会長に就任して以来、90歳までサークルの“顔”を務め、会員の指導や育成にも励んだ。09年、85歳で出場した県点字競技会の上級の部でみごと優勝。「このときもうれしかったが、点訳人生の中で何より素敵な出来事だったのは教え子たちの活躍」と目を細める。11年に3人の教え子が、同大会の上・中級の部でそれぞれ優勝、初級の部でも3位に入賞し、さらにその中の一人が、難関の点字技能師試験に合格する快挙を見せた。
一度に5人の視覚障がい者に点訳本を送っていた時期もあったが、2年前からは0人。「もうやめようか」とも思ったが「まだ誰かが必要とされているかもしれない」と、92歳となった今も、1日4時間はパソコンに向かい、市の広報誌であれば1週間ほどを費やして点訳本を作成している。
昨年、多年にわたる社会貢献が認められ「県高齢者特別賞」を受賞。「点訳はボランティアというより、もはや生きがいでや
っている。点訳に関心も持ってくれる人が増えることが私の願い」と話していた。