氷上製作所の再建を進める 池田一一さん (丹波市市島町)

2016.08.21
たんばのひと

古巣に戻り黒字を確保

 危機に陥っていた丹波市の名門企業、氷上製作所の経営を引き受け、再建を軌道に乗せている。カーオーディオなど三菱電機からの受注が主体だった旧会社は、リーマンショック後の不況で売り上げが激減、倒産寸前になった。メーンバンクから白羽の矢を立てられたのが、かつての取締役で、独立し別の会社、加美電機(多可町)に移っていた池田さん。

 銀行の協力で旧社の債務を整理し、新会社の株をすべて加美電機と自分個人で持って、従業員は1人も解雇せずに昨年9月から経営を引き継いだ。売り上げは徐々に回復。最盛期にはまだ及ばないが、経費節減などで黒字を確保。「社員の士気も上がり、再生のメドがついた」。

 1967年、氷上製作所に入社し、将来を託されるまでになったが、電子回路の基板組み立てを外注のまま続けるか、自社製にするかでトップと意見が対立。「将来、すべての機器が電子化すると予測していたので、自社製化が必要と確信していた」。

 83年、加美電機を設立。当初は氷上製作所の別会社だったが、体よく放り出されたのが実態。借家の工場で、看板さえ手作りという苦しいスタートだった。5年後、飛び込みで入った信用組合の支店長に見込まれ1億円の融資を得て、「チップマウンター」という、大手企業でも珍しかった最新鋭のチップ実装機を導入。これを契機に最先端企業からの注文が次々に舞い込み、同社が組み立てた電子回路は今や、スマホ、金融関連、医療機器など様々な分野の最先端企業に出荷される。

 先見性と信念で古巣の建て直しに挑む72歳。熊本県出身。

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