演奏指導で舞台成功へ
脳梗塞の後遺症で言語障害が残り、右半身不随になりながらも、ハーモニカやピアノの演奏に取り組んでいる落語家・桂む雀さんと、仲間によるコンサートが先月、篠山市内で開かれ、その大舞台に丹波市の4人の障がい者と「ステッキーズ」の名で、3度目のハーモニカ協演を果たした。ハーモニカ歴12年。む雀さんと同様の障がいがある4人に演奏指導も行い、舞台を成功に導いた。「指導だなんてとんでもない。ただ一緒に楽しんでいるだけです」。
63歳で郵便局を退職。農業やボランティアをしながら毎日を過ごしていたが、67歳のとき心臓の病に倒れた。手術によって一命をとりとめたが「初めて死を意識した」。1カ月後退院し、京都の病院からの帰りの電車の中で「なんとか生き延びたが、この先なんの楽しみもなく一生を終えるのかなあ」と考えながら新聞に目を通していたとき、文化教室の広告が目に留まった。「一番受講料が安かったのがハーモニカ教室でした」。
もともと音楽好きだったこともあり、軽い気持ちで入門。京都市内にある教室に月2回、片道約2時間かけて通うように。「一人で吹いても楽しいが、仲間との合奏ではいろんな音が重なり響き合う。その瞬間がたまらない」と、とりこになった。交友は広がり、6年前にはアマチュア合奏団「ハーモニカンズ・アバンドーネ」に入団。約30人の仲間とコンクールに向けて練習したり、高齢者施設への訪問演奏会などに励んでいる。
「そろそろ“終活”の時期が近づいてきたが、『久合田は死んでもハーモニカだけは離さなかった』。そんな逸話が語られるくらい、これからも熱中していきたい」。79歳。