ビルマ戦線で敗れ収容所に入れられた小隊が明日は日本へ帰還するという日、すでに隊から離れてこの地で巡礼をする決心をしていた水島上等兵が、僧姿で柵の外に姿を現す。▼「埴生の宿」を合唱し「一緒に帰ろう」と叫ぶ仲間に、水島は「仰げば尊し」を奏で、森の向こうに去っていく―映画「ビルマの竪琴」のラストシーンは、日本の唱歌と静かな竪琴のメロディーが心を揺さぶる。▼小紙16日号「自由の声」欄に、北海道に住む鈴木祥子さんが「美和の音頭と『縄文の心』」という題で、ふるさとの音頭の歌詞を懐かしんだという文を載せておられる。遠く離れた故郷に寄せる思いには、映画の兵士たちと共通のものがあろう。▼以前、丹波在住の知人夫婦から聞いた話で、米国ラスベガスに旅行した際、日本人のガイド兼運転手に「どこから来ました」と訊かれた。「丹波ってわかりますか。デカンショ節で知られる篠山という町の近くです」と答えると、「えっ?僕の実家は春日町ですよ」と言われてびっくり。彼は「父親から丹波新聞が毎月まとめて送られてくるのを、いつも大変楽しみにしている」とも話したという。▼異郷の地で小紙を熟読して下さる読者に感謝。ミャンマー(ビルマ)の風となったやも知れぬ水島上等兵に、日本から新聞を送ってやりたい。(E)