今年度、兵庫県が5人に贈った「県文化賞」受賞者の一人。「丹波焼を代表する作家として、豪快な造形と表情豊かな施釉で観る者の心をとらえる作品を創造するとともに、伝統を引き継ぐ後進の育成に努めるなど美術の振興に尽くした」として同賞を受けた。
作風は、器の表面をヘラで削り落として模様をつける面取りにより、険しい山の稜線を表現した造形に、山頂に降り積もった雪を連想させる「ワラ白釉」や、しっとりとした栗皮色に発色する赤土部を施したものが中心で、雄々しさを感じさせる。「山の稜線や川の流れなど、自然の中に存在する直線や曲線からひらめきを得て、作品に投影しているので、モチーフは無限にあります」とほほえむ。
篠山産業高校を卒業後、大阪の土木建築業者で働いた。3年後、県立の窯業試験場の職員だった父親が開いた「末晴窯」で作陶に入った。40歳から今日まで5人の弟子をとり、そのうち3人は丹波焼の陶工として活躍している。「口やかましくは言いませんでした。作陶は感性に頼るところが大きく、言葉では伝えられない部分も多いので、自分で感じてノウハウを盗め、という考え。私もそうやって学んできた」。
陶歴47年。今でも毎年、大手百貨店で個展を開催しているほか、公募展にも精力的に出品するなど挑戦を続けている。「自分の作品がどう評価されるか、プレッシャーも感じるが、だからこそ創作意欲がわいてくる」。
受賞に「喜びというより、責任の重さを感じる。これからもこれまで通りの仕事をしながら、そのことがこの先の丹波焼の発展につながっていけばうれしい」。68歳。