今田町出身の下中弥三郎が創業した「平凡社」が出した事典『や、此は便利だ』に、「児童を愛護する不可思議なお爺さん」と説明された語句がある。サンタクロースのことだ。この事典は大正初期の発行。当時にすれば、この説明が適当だったのだろうが、「不可思議なお爺さん」は今も子どもに愛されている。▼サンタを愛する幼い子は、サンタは存在していると思っている。サンタは実在するから、存在を信じるのではなく、サンタを信じているからこそ、子どもにとってサンタは実在する。これは大人にとっての神仏の存在も同様だろう。神仏を信じるがゆえに、神仏は存在する。とはいえ、どれほど信じているか。▼正月になると、雑煮を食べ、しめ縄を飾る。これらは、家々に訪れてくる「年神」にまつわるものだという。しかし、しめ縄も雑煮も正月の風習にとどまり、年神はさほど意識していないというのが大方ではないか。▼マザーテレサは、「お金のためだったら、二百万ドルやると言われても、ハンセン病者に触れる仕事は私もしたくない」と言った。では、なぜするのか。「お金のためでなく、神への愛のためなら喜んでします」。▼日本での神とキリスト教での神は違うが、信仰の対象となるものの存在を信じることの意味を教えてくれる言葉だ。(Y)