多紀郷友会発行の機関誌「郷友」1月号に、総務省に勤務する篠山出身の圓増正宏さんが寄せた文章を読んだ。篠山の今後の指針について論じたものだ。地域振興に取り組むとき、我々はつい他の地域ですでに行われている先進事例を採用しがち。たとえば、ふるさと納税の返礼品、B級グルメ、ゆるキャラ…。▼しかし、これらは多くの地域で行われるだけに成果を挙げるのは容易でない。だから「みんながしていることはせずに、みんながしていないことをするという発想が今求められているように思う」と、圓増さんは言う。▼山南町出身の先人、永井幸太郎も同様の意見の持ち主だった。鈴木商店の屋台骨として活躍し、鈴木商店倒産後、日商岩井の前身である日商を立ち上げ、社長に就任。戦後、貿易庁長官になった人物だ。▼その永井が大正13年、旧制柏原中学校で講話をし、「商道の極意は大勢に逆行すること」と説いている。誰もが向かう方向ではなく、違う方向に進むことが商道の極意であり、「人の反対をやることが処世上の一要件」と話した。▼「通信や交通が発達した現代では一般の人々が向かう所は一致しやすい」とも永井は言っているが、この講話から90余年後の今はもっと一致しやすい環境にある。「大勢に逆行」の姿勢はさらに重みを増している。(Y)