明治維新

2017.02.16
丹波春秋

 高校の日本史は幕末前で時間切れ。最後の授業で「何でも自由に書け」と言われ、「明治維新の結果、日本は近代化し西洋列強の植民地化を免れた。長州、薩摩の下級武士の活躍で世界に伍す国家が出来たのはすばらしい」と書いてかなり良い点をもらった。▼ただ長じてから、司馬遼太郎の「坂の上の雲」に見られる明治の“陽”のイメージが、どうして「大東亜戦争」の“陰”の時代につながっていくのかが疑問だった。▼近刊の「明治維新という過ち」(原田伊織著)は、脳天をたたき割るような本だった。「日本を滅ぼした吉田松陰と長州テロリスト」と副題がつき、高杉晋作も坂本龍馬も、勝海舟までもが一刀両断に切られている。▼「“尊皇”派、“佐幕”派入り乱れて戦った幕末の動乱は徳川幕府、有力諸藩の間での権力闘争に過ぎず、最後の勝者となった薩長、厳密には長州が作り上げた神話こそ“明治維新”」という要旨。▼そもそも当時の文書に『御一新』はあっても『明治維新』なる言葉は見当たらず、昭和になって軍部が『昭和維新』を言い出してから後付けで登場したという。▼「幕末史」(半藤一利著)も、原田氏ほどの過激さはないものの、やはり「“官軍”“賊軍”」史観が陥りがちな陥穽を説く。「大政奉還」から150年の今年、高校の授業の続きを独習しよう。(E)

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