日本玩具博物館(姫路市)で開催中の雛人形の特別展は壮観だ。500組を超えるコレクションから、江戸、明治、大正期のものを中心に展示され、檜皮葺の御殿に内裏さまが鎮座する傍に、大勢の家来や官女が控えるものも。▼どれも向かって右に男雛、左に女雛が並び、何も疑問を感じなかったが、街に戻ってほかのを見ると、例外なく向かって左が男なので、いささか混乱した。館に訊くと、昭和の初めまではずっと、向かって右が男。つまり本人側から見て左が上位だったそうだ。▼ところが昭和天皇の即位式の際、天皇が向かって左に座られ、また御真影も左が天皇になっていることから、百貨店などが一斉にそれに倣うようになり、左右逆転した。▼しかし京都などでは「古来の方式にのっとるべき」と「右が男」にこだわる向きもあり、問題の即位式も「中央の“高御座”が天皇、少し後方の向かってやや右が皇后の座。平面的に考えるべきでない。洋装のご真影は明治の文明開化の時の影響」という。▼舞台は向かって右が「上手」。しかし「左大臣」が上とは言え、「左遷」なる言葉もある。日本が倣ってきた中国でも左右の地位に変遷があったようで、話は複雑。内裏雛いづれを右に祀るなる。うーん、この際「男上位」の前提も崩れたことだし、どちらでもいいか。(E)