師の教え「心を詠む」
昨年12月に発足し、今年度から活動が本格化する丹波市俳句協会の会長。中兵庫信用金庫の前身、氷上信用金庫で働いていた26歳の時、ひょんなことから「業務で句会」に顔を出すようになり、半世紀以上が過ぎた。俳句の師で、細見綾子に俳句づくりを勧めた佐治の町医者、田村斉の言葉「多捨多作」「心を詠む」を胸に作句を続けている。
仕事で田村邸を訪れた際、平日昼間の句会に勧誘された。業務中でとても無理だと断ると、「句会の日を預金日にする」と支店に連絡があり、支店長の指示で参加することに。句会には町長や保健所長、教師もいた。「先生は80歳近かった。若くて貴重な存在と思われたのか、一度も怒られなかった」。
斉の句会で細見綾子を時折見かけた。「先生は威厳があったけれど、綾子さんは気さくな、でも上品な、田舎のおばあちゃんという感じだった」。
句会は、五句持って行き、互選する。「滅多に先生が選ぶ句に入らなかった。先生の師は『倦鳥』の松瀬々。『倦鳥』は心を詠む。心が入っていない句はアカンと言われたことが一番心に残っている」。
斉の死後も句会は続いたが、異動になり出席がかなわなくなった。それでも日記に俳句を綴り、夏休みに1日で50句作ったこともあった。
斉に誘われた時に断りはしたが、内心「まんざらでもない」と思った。小学4年生の時に作った句でほめられたことがあり、小さな自尊感情を内に秘めていた。「人をほめる、というのは大事。上達には、ほめること」。俳句協会の事業でたまたま賞に入り、俳句が好きになり、長く続ける人が出て来るかもしれないと期待している。79歳。