待場印刷所代表 待場輝一さん(丹波市山南町谷川)

2017.05.21
たんばのひと

80歳現役“町の印刷所”

 印刷の仕事に携わり65年。今年、傘寿(80歳)を迎えた。今も“町の印刷所”として現役を貫いている。「パソコンが出回るまでは印刷の注文が多かった。時代の流れを感じますが、体が許す限り仕事を続けたい」と話す。

 山南中学校3年のとき、同級生有志と「世界時報」と名づけたガリ版の新聞をおおよそ月に1回、発行した。国内外の出来事を新聞から拾い集めて編集。全校生に配布した。

 10歳の時に父親が死去。16歳上の兄は国鉄に勤務し、家を離れていた。母との二人暮らし。ガリ版新聞を出した体験から、中学校の担任教諭に勧められ、卒業後、家の近くの荒木印刷所に入った。担任は同印刷所に「定時制に行かせてやってほしい」と頼んでくれ、入社と同時に柏原高校の定時制に入った。朝7時に誰よりも早く出社、掃除をし、冬場は火をおこした。下働きとして夕方まで働き、学校へ通った。高校では卓球部に所属。全日制の生徒も参加した校内卓球大会で優勝したこともある。

 40年ほど前、一級技能検定(凸版印刷作業)に合格。兵庫県では最初の合格者だった。同印刷所に勤めながら家の近くの谷川郵便局でアルバイト。毎朝5時前、谷川駅に着いた汽車から郵便物を取り出し、郵便局に運んだ。独立するための資金稼ぎだった。48歳で印刷所を構えた。

 印刷技術は大きく変わった。時代に合わせ新しい機材を導入する一方、活字を拾う昔ながらの技術も継承している。「名刺を活字で印刷してほしいというお客さんもあるので」という。「印刷所を続けてほしいと言われるお客さんもおられる。ここまで続けられたのは、そんなお客さんの支えがあるからこそ」。

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