きょう5月14日は「母の日」―。教育者であり、3児の母でもあった春日出身の井上秀は大正11年、米国ワシントンで開かれた世界婦人軍縮会議に出席し、「母としての婦人の立場」から軍備撤廃を訴えた。秀は日本婦人平和協会理事長であり、日本の女性を代表して演説した。▼「婦人は人類の母であり、種族を保護することについて神の使命を受けている」と述べ、軍備撤廃論を展開。「私ども婦人の理想から見て、人種を破滅に導くために備えるような軍備を無用に帰せしむること。軍備を根絶せしむることは、生命の母であり、愛の化身である婦人の衷心の希望であらねばなりませぬ」と訴えた。▼秀の熱弁の背景には、時代もあったと思われる。大正7年に第一次世界大戦が終結。軍縮が世界の潮流となり、どこの国も軍隊を縮小した。▼司馬遼太郎によると、日本では、軍人が軍服を着て都電に乗っていると、誰かにブーツを蹴られたりしたので、なるべく平服で都電に乗ったそうだ。司馬は講演で「日本人は世界のトレンドに弱いものですから、第一次大戦が終わって、軍縮だ、平和だということになった」と語っている。▼大戦の後、もう戦争はないとまで言われたが、夢想に終わった。歴史に学びつつ、ムードに浮かされることなく、真摯に時代と向き合いたい。(Y)