働く

2017.06.03
丹波春秋

 朝ドラ「ひよっこ」を楽しみに見ている。集団就職で地方から東京へ出た少女が主人公。工場で働く彼女は、低賃金なのに貧しく生活の苦しい実家に給料の多くを仕送りする。家族のために少しでも役立ちたい。家族に喜んでもらいたいと思うからだ。▼国語学者の金田一春彦氏によると、英語で、働くことをいう「work」には勉強することも含まれるが、日本では勉強を「働く」とは言わない。「自分のために何かをすることではなく、何かほかの人の利益になること。金を稼いでくるとか家事をするのが『働く』である」という。▼家族のため、大きくは社会全体のために行動すること。それが働くである。思想家の内田樹氏は、「自己を供物として捧げるということは、人間に深い感動をもたらす経験である」とする。働くとは、人のために自分を捧げること。そこに生きがいを感じるのが人間の本来の姿なのだろう。▼それが今は崩れかかっているのか、地元の知り合いの会社経営者がこぼしていた。よく働いてくれる男性の非正規社員に正社員にならないかと声をかけると、断られたという。理由は身軽でいられなくなるから。彼にとって、働くとはどこまでも自分のためなのだろう。▼明日5日から、働く世界を中学2年生が垣間見るトライやるが始まる。 (Y)

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