丹波出身の洞穴探検家、故・越智研一郎氏の足跡を追って岩手県の龍泉洞、さらに20キロ北にある安家洞に行った。深くて透明な地底湖が美しい龍泉洞に比べると、安家洞は土色一色で地味だが、総延長24キロという長さは日本一。
平日の午後4時頃、観光客はほかに誰もいない。ヘルメットを渡され1人で入り口をくぐるとひんやりとした空気が漂ってきた。蛍光灯だけを頼りに進む。頭上から細い氷柱が無数にぶら下がり、下からは様々な形の石筍がニョキニョキと突き出て、いかにも神秘の迷宮。
通路は入り組み、上ったり下りたり。上だけを見ていると足元を滑らせてしまう。背中をかがめてくぐる所もあり、ヘルメットがあちこちでつかえる。500メートルの終点にたどり着くまでにだんだん恐ろしくなり、標識が現れてほっとした。ガイドを頼めば希望に応じて奥まで進めるそうだが。
越智氏は1959年、龍泉洞の第1次調査隊の探検の後、他の隊員らと共に安家洞も踏破。当時最長とされた秋芳洞(山口県)をしのぐ長さであることを突き止めた。暗闇の迷宮をよく行ったものと、改めて感心する。
2年前の台風による集中豪雨では洞内に土砂や水がいっぱいに流れ込み、その時の水位がはるか上方に示されていた。タイの洞穴奥からの少年達の生還を心より祝う。(E)