伝統作物の復興に尽力
兵庫県篠山市大山上の伝統作物「天内(あもち)芋」の復興に力を注いでいる。「天内芋は、先人が残してくれた地域の宝物。地域農業振興の特産物として活かし、大切に守り続けていきたい」と復興計画の音頭を執った。数年前まで、同集落の一部の農家が自家消費用に細々と栽培していたにすぎなかったが、復興計画に賛同した住民が集まって年々作付面積を増やし、今年は約25アールで栽培している。間もなく収穫期。2・5トンほどの収量を見込んでいる。
天内芋は、「土垂」という種類のサトイモで、一般的なサトイモと比べて粘り気があり、もちっとした食感が特徴。同集落の味淵神社一帯の天内谷で代々栽培されてきた。江戸時代には篠山藩への献上品として珍重されたと伝わっており、地域の秋祭りや冠婚葬祭、正月の料理には欠かせない食材でもあった。市場に出回ることもなく、近年の農業衰退で栽培者が減少し、風前の灯の状態にあった。
昨年まで6年間、自治会長を務めた。地域課題を考える立場の中で、以前から声が上がっていた天内芋復興ののろしを上げた。このほかにも課題だった山の境界明瞭化や植林地の荒廃、集落の人口減少などに取り組むため、一昨年、住民有志20数人と一般社団法人「天内」を結成。天内芋生産にも弾みがつき、目標だった市場への出荷が叶い、収益も上げられるようになった。「地元の大山小学校が関心を持ってくれ、児童らが栽培や調理実習、マスコットキャラクター考案などに励んでくれたことも天内芋が活気づいた要因の一つ」と感謝し、「地域交流を活発化させ、大山の魅力を発信する仕掛けをつくっていきたい」と抱負。71歳。