連載小説は日刊紙の魅力の一つだ。最近は毎日新聞の高村薫「我らが少女A」と石田衣良「炎のなかへ」を欠かさず読んでいたが、いずれも終わってしまい、淋しい。
「少女A」は12年前に殺され迷宮入りしている画塾の老女教師の事件を巡る話で、推理小説仕立てながら、ストーリーがいつまでも進展せず堂々めぐりしているようで、骨が折れた。
さらに重かったのは、今は亡き「少女A」の周りに、ゲームお宅少年を引きずる男がいて、マニアックなゲームの主人公の名前が次々に出没すること。作者にとっても未知な世界だったろうと思うが、さすがによく調べたものと感心した。
「炎」は、戦時中、米国人を父に持つ中学生が主人公。特定のモデルを描いたのではなく、当時同じ境遇の少年が2万人いたそうだ。終盤、延々と続く東京大空襲の中を家族、親戚を引き連れて逃げ回る場面は、目を覆いたくなりながらも次回が待ち遠しかった。作者は、映像化されて毎年8月に放映してほしいと望んでいる。
高村氏は「長編小説を1回1000字ずつ細切れにするのは、読み手はよほど没入できなければ続かないし、書き手もそれだけの技量を求められる」と同紙で振り返っている。外国の新聞ではまずお目にかからない連載小説。日本の新聞は素晴らしい。(E)