兵庫県篠山市に残る八上城跡を拠点に一帯を治めた戦国武将・波多野秀治のゆかりの地を歩くツアーが25日、同市内で開かれた。落城の際に一族が落ち延びたと伝わり、秀治の供養塔などがある同市味間奥地区では、秀治の子孫、波多野吉和さん(71)が一行を案内。2020年のNHK大河ドラマが、戦国武将・明智光秀を主人公にした「麒麟がくる」に決定したこともあり、光秀によって滅ぼされた秀治の足跡を詳細に伝え、参加した27人の市民を歴史ロマンの世界に誘っていた。
地の利を生かして光秀らの猛攻に耐えたものの、天正7年(1579)、ついに秀治らは降伏し、信長の本拠地、安土に送られて処刑されたと伝わる。
ツアーは、市の「日本遺産・創造都市めぐりツアー」の一環で、一般社団法人「ウイズささやま」が企画した。
篠山城跡の天守台から八上城跡を遠望した後、秀治の遺児で戦禍を逃れた甚蔵に始まる味間奥の旧波多野家長屋門や、秀治の霊を弔う墓所、御霊神社、大国寺などを散策したほか、落城悲話の史跡、乙女塚や明智方の般若寺城跡なども巡った。
味間奥地区を案内した吉和さんは、丹波攻めの歴史を織り交ぜながら、地域に残る秀治の伝承を説明。墓所では辞世の句を紹介し、「弱ってしまった。思い乱れた心の闇に迷わなければ、来世こそ思い知らせてやるぞという意味のよう」と言い、「参拝していただき、本当にありがとうございました」と子孫を代表して、また、秀治に代わって謝辞を述べていた。
ツアーに参加した男性(70)は、神戸市から移住して1年。「篠山が好きでしょっちゅう来ていたが、八上城のことは知らなかった。篠山は歴史の宝庫。ツアーに参加して、より篠山がおもしろくなりました」と笑顔で話していた。