兵庫県篠山市の県立篠山鳳鳴高校・自然科学部(7人)がこのほど、神戸市のバンドー神戸青少年科学館で開かれた「第42回県高校総合文化祭・自然科学部門発表会」で、初めて最優秀賞に輝き、来年7月に佐賀県で開かれる全国大会への出場権を獲得した。自然科学関係者の間にある「体細胞の分裂を観察するには、午前10時が良い」という仮説の検証に挑んだ生徒たち。「観察数が多くなく、データに信用性が足りなかったけれど、まさか最優秀を取れるとは」と驚き、「全国に向けてさらに研究の精度を高めていきたい」と意気込む。
日没から16時間後、「光」が”壁”つくる?
県内各地から出場があり、物理、化学、生物などの部門で研究発表が行われ、篠山鳳鳴高校は、部門横断で全体の最優秀賞に輝いた。
実験などの際、タマネギなどの根の細胞分裂を観察するには午前10時が適当とされる仮説がありながらも、その理由はわからないという情報を知った生徒たち。考え得る環境要因としては、明暗周期と温度変化があるが、通常、実験に使われる細胞は実験室内で発根されるため、温度よりも「光」に関係があるのではないか、と推測した。
そこで、「午前10時」がおおよそ前日の日没から16時間経過していることに着目。光を12時間当てた後、16時間暗くする実験を行ったところ、経過後に分裂期の細胞の割合が増えていることを確認した。
このことから、体細胞が光に当たることで分裂の周期に何らかの要因で”壁”ができ、暗くなった16時間後に、壁に遮らていた細胞が一斉に動き出すことで分裂が活発になるのではないか、という仮説を立てた。
光の色も細胞周期の停止に影響か
この“仮説の仮説”を検証するため、ひたすら実験を繰り返した。発根させたタマネギの細胞を採取し、色を付けたものを顕微鏡で観察するプレパラートを作成。画像を撮影しては、分裂期の細胞を数えた。
また、光の色が影響を与えているのかも実験し、青色の光が細胞周期の停止に関わっているのではないかという仮説も提唱した。
一方、どれが分裂期の細胞かを判定することが困難で、データの信頼性には限界があることや、観察者によって見解が異なること、より多くの試料から統計的に処理する必要があることが課題として残ったという。
それでも、最新設備を使わず、生徒たちが「身の丈」にあった研究をしている点などが評価され、見事、最優秀賞を受賞した。
大舞台で発表に挑んだ同部の降矢大智部長(2年)は、「部員が少ないため、一人ひとりの仕事量が多かった」と振り返りながらも、「仮説を立て、その通りの結果が出た時は、『これってすごいことでは』と思えた」と笑顔。「仲間や顧問の先生に感謝している。全国は参加することに意義があると思っているので、胸を張って発表できるように、これから研究を深めていきたい」と話していた。