高インフレが続き、再三通貨危機が懸念されるアルゼンチン。07年に統計局が1月のインフレ率を1・5%、年率では20%近くなると報告した。「峠を越えた」と主張していた大統領は局長を更迭し、後任者は「計算し直すともっと低かった」と発表。
非営利団体が独自の店頭調査に基づいて「実際は当局の数値の3倍」と発表すると、政府から団体の資格はく奪の圧力がかかり、その挙句、同国はいよいよ信用を失ってIMF(国際通貨基金)からも見離されそうに。―「経済指標のウソ」(ザカリー・カラベル著)が書いている。
日本での統計不正問題にこんな話を引き合いに出すのは不謹慎かも知れないが、「問題意識を伝えた」という首相秘書官の答弁が、いささか気になるのは筆者だけだろうか。
前掲書によると、経済指標が整備され始めたのは経済政策がいよいよ重要になった大恐慌の頃、たかだか百年前から。最も基幹のGDP(国内総生産)でさえ米国は6年前、「研究開発費」を新たに参入して2・5%かさ上げし、以後日本を含む各国もそれに追随した。
統計はいまだ発展途上なわけで、方式を切り替える時は以前との連続性が担保されるべきだし、まして意図的な加工は許されない。またそれ以前に、個々の数字への過度の依存も控えなければと思う。(E)