公民館が”居酒屋”に―。兵庫県丹波篠山市村雲地区の小立公民館でこのほど、初の試み「コミュニティ居酒屋in小立」が開かれた。住民ではなく、ボランティアグループのスタッフが調理を担当。訪れた人たちは生ビールなどを片手に、メニューから思い思いの「肴」を選んでは、世間話などに花を咲かせて盛り上がった。居酒屋がある市の中心部まで距離があり、車で出掛けたら帰りが大変という立地。店でもなく、家でもない場所で、気軽に酒宴を楽しんだ。
午後5時に”開店”すると、男女問わず、地域の人たちが続々と公民館に”来店”した。
1杯200円の生ビールをはじめとする酒類に加え、食育や文化活動などに取り組んでいるグループ「ささやま暮らし開き風味里(ファミリー)」(加古佳与子代表)が鶏レバーや出汁巻き玉子、カツ、ポテトサラダ、冷ややっこなどの定番メニューや、ベトナムのつけ麺「ブンチャー」などの変わり種まで100円―500円のつまみを用意。客は酒や料理などを受け取ると、その場で現金を払う「キャッシュオンデリバリー」方式の居酒屋を満喫した。
閉店した午後9時までに25人が来店。世間話から料理の話まで、さまざまな話題で盛り上がり、”飲みにケーション”を楽しんだ。
お酒を飲んだり、わいわい盛り上がることが、「好きな」人が多い小立。以前は祭りなどのイベント時にビールサーバーをレンタルしていたが、「置いとこうや」という声が上がり、10年ほど前に自治会でサーバーを購入。以来、毎年、春先から夏の終わりまで、公民館に「生ビール」と書かれた提灯が掲げられ、仕事や農作業を終えた人がふらりと立ち寄ってはビールと乾きもので一杯やっている。ノートに名前と料金を書き込む自己申告制だ。
自治会主催の行事は役員や女性陣が準備や片付けに追われてゆっくり楽しめない点もあり、近くに居酒屋はほとんどないうえ、自治会の予算も限られている。そこで松下正宣自治会長(64)が、「特産の黒大豆の栽培が忙しくなる前に、誰でも気軽に来て、お酒を楽しめる場をつくりたい」と、まちづくり協議会などでつながりのあった加古代表(52)とコミュニティ居酒屋を計画。料理を加古代表らに準備してもらうことで、飲みたいだけ飲み、食べたいだけ食べることができ、さらには客が自分でお金を払うことで自治会からの出費ゼロという場をつくり上げた。
松下さんは、「家で飲んでいてもコミュニケーションできない。みんなわきあいあいとできてよかった。普段、いろいろとお世話になっている奥さん方にもゴマがすれたかな」と笑顔。加古さんは、「試験的に実施したので原材料費がなんとかカバーできるくらいだったけれど、需要はあると思うので、若い人でお店を持ちたい人や料理が好きな人の新しい仕事になるかも」と話していた。