兵庫県丹波篠山市大芋地区の福井に、地元産の黒大豆やもち米を使った台湾式の中華粽(ちまき)の専門店「おくも丹波黒豆肉粽」がオープンした。地元の仲谷佳子さん(41)が開業。6年前に同市に移住した仲谷さんは、「『丹波篠山に来たら、買っていかないと』と言ってもらえるような新名物になれば」と意気込み、「ここで一生暮らすと決めて開業した。地方の人口減少を止めるのは難しいけれど、店を通してこの地域に人を呼ぶことで、少しでも現状を維持していく力になりたい」と話している。
販売する粽は、通常のせいろで蒸すものではなく、大鍋で煮込む台南の伝統的なスタイル。地元産の黒大豆ともち米をはじめ、下味をつけた豚肉やシイタケ、うずらを笹の葉で包み、6時間かけて煮込む。
もっちりとしたもち米と、とろける角煮、ふっくら甘い大粒の黒大豆が特長。好みで黒豆しょう油を使ったタレや黒豆きな粉をつけて食べる。
仲谷さんによると、粽に特化した専門店は全国的に珍しいという。
持ち帰り専門で、冷凍での全国発送にも対応。店の横などに自由に食べることができるスペースを設けている。
仲谷さんは大阪市内でレストランや居酒屋などを経営後、田舎での暮らしを求めて家族で移住。築100年ほどになる民家で生活を始めた。
「旅のごはんや。」の屋号で、各地のイベントなどに出向き、アジアを中心に自身が旅した世界各国の屋台料理を提供する中、市の特産の黒大豆を、「枝豆のシーズンや正月以外でも年中楽しんでほしい」と思うようになった。そこで、味はもちろん、殺菌効果のある笹の葉に包むところが「賢い料理」と感銘を受けた粽を応用した「黒豆肉粽」を考案。これまでは主にイベントで販売してきた。
仲谷さんは移住後、閉校した旧大芋小学校をフリーマーケットの会場にした「大芋にちよう市」や、各地の有名パン店を同地域に呼んだイベント「パンラブ」など、地域のにぎわいの創出や、地区外の人を呼び込むことで定住促進につなげる企画を次々と打ち出してきた。
さまざまなイベントを通して、「良いもの」を提供すれば、遠くからでも人に来てもらえることを確認し、「外で売るのではなく、店に来てもらうことで、地域を知ってもらえる。商品に使う農産物を作る農家にも喜んでもらえるのでは」と考え、常設店の開業を決意。「令和への改元と同時に丹波篠山を大きく世に出す場になれれば」と、元商店の空き家を借り、オープンの日を迎えた。
仲谷さんは、「これからも、この地域が今のまま変わらずにいられる力になれたら」と意気込んでいる。
1個540円(税別)。黒大豆やシイタケが入っていない「白粽」は280円(同)。ともに店舗販売の価格。
営業時間は午前10時―午後4時。日、月曜定休。定休日や時間外には、近くの「くらしの百貨 おくも」でも販売している。