参議院選挙の投開票まであと1日となった。今選挙の争点の一つ、「年金」に焦点をあて、弊紙発行エリアである兵庫県中部の山間地、丹波地域の被保険者の声を拾った。
老齢給付受給者は、厚生年金で同県丹波篠山市が1万2175人、同県丹波市が1万8859人。国民年金で丹波篠山市が1万3436人、丹波市が2万989人(昨年3月末、重複受給あり)いる。
「老後に2000万円の蓄えが必要と言われても、やっと子どもの学費と仕送りが終わって一息ついたところ。これから退職までの間にそんなに蓄えられない」と、50代会社員男性は嘆く。60歳まで4年残しているが、今から厚生年金の受給開始年齢の65歳まで働く算段をしている。65歳になったらなったで、70歳まで働ける所を探している自分の姿が想像でき、「働かなくても済む老後のイメージがわかない」と苦笑いする。
企業の再雇用が一般化し、65歳まで働くのが定着しつつある。丹波市シルバー人材センターに60歳で入会する人は少なく、再雇用満了後、入会者がある。清掃であったり、早朝であったりと、条件は厳しいが、肉体労働、現場作業では年齢を問わず、仕事はあるという。
大企業と違って企業年金がある会社は少なく、退職金もほとんどない零細事業所が多い丹波地域。老後資金に「まとまったお金」を手にする機会が少ない。
自営業の家に生まれた40代の女性は、親から、社会保障がしっかりした会社に勤めている人と結婚するように言われて育った。2カ月に1度振り込まれる親の年金額は12万円に満たない。介護保険料や後期高齢者医療保険の支払いもある。「親は、お金がない、お金がないと言う。施設に入所するにもお金がいるんやでと冗談めかして言っているけれど、実際、一生働き、稼ぎ続けてもらうしかない」。
会社の定年退職後、農業に打ち込んでいる70代の男性は、厚生年金が主な収入源。コメや野菜は自家消費と知り合いへのおすそ分け用で、30アールほどの丹波大納言小豆の収入はレジャーに使う。「かつてほど手厚くなくなったとはいえ、我々世代は社会保障の恩恵に預かっている。大変なのがこれからの世代。若い世代が将来への不安を抱えないよう、政治で制度をしっかり考えてほしい」と注文をつけた。
50代自営業男性は、年金は納付しているが、手にする額に期待はしていない。「最終的に生きていく道は生活保護の受給かな。昔は失業保険を受給するのに抵抗感があったが、今は当然の権利になったのと同じようなことになるだろう」と予言。
「親世代は、子どもと同居が一般的だった。自分たちは、子が老いた親を養っている。でも、自分たちは子の世話になれないし、世話してくれと言うような時代でないことを理解している世代。世の中が大きく変わった。最終的に国に面倒を見てもらわないと、どうにもならないだろう」と未来を冷静に見つめた。