学校で進むトイレ”洋式化” 夏休み活用し工事進む 和式派の子も「人が座った後は嫌」

2019.08.30
ニュース丹波篠山市地域

学校で進むトイレ”洋式化” 夏休み活用し工事進む 和式派の子も「人が座った後は嫌」

子どもたちの夏休みも残りわずか。まもなく新学期を迎える学校現場では、人が少なくなった長期休暇のタイミングでさまざまな改修工事が行われた。中でも子どもたちが最も目に見えて変化を感じやすいのがトイレの改修。近年、和式から洋式へと改修する流れが加速度的に進んでいる。ほとんどの家庭で洋式が主流のため、和式が使いづらい子どもがいることや、災害時には避難所となるため、高齢者なども洋式のほうが使いやすいからだ。一方で、「和式でないと嫌」という子どももいる。子どもたちの”トイレ”を追った。

「洋式やないと絶対に嫌。和式はなんか汚いし、足が疲れる」―。兵庫県丹波篠山市の小学2年生の男子児童がぼやいた。別の中学2年生の女子生徒は、「休み時間になったら洋式のトイレの取り合い。列ができることもある」と”事情”を打ち明けた。

ある小学校の校長によると、和式が怖くて、洋式が空くのを待っている子もいるそう。また、洋式でしかトイレができない子どもが幼稚園から小学校にあがる時には、幼稚園の教諭が小学校の教諭に、「和式ではできない」という引き継ぎを行っているケースもあるという。

避難所の役割も

同じ学校にある和式トイレ。「和式でないと嫌」という子どもたちもいる

文部科学省は2016年、全国の公立小中学校のトイレについて状況調査を実施している。

当時、全国にある全便器数は約140万基で、うち洋式は約61万基(43・3%)、和式は約79万基(56・7%)。洋式の割合を示す「洋式化率」が最も高かったのは神奈川県の58・4%で、最も低かったのは山口県の26・7%だった。

文科省の調査は同年に発生した熊本地震を受けたもの。地域の避難所として使用される学校では、子どもたちだけでなく一般の人も利用することになり、しゃがむことが難しい高齢者には和式よりも洋式の利用が多くみられたことにあった。

また、全国の自治体から、従来、「5K」(くさい・怖い・壊れている・暗い・汚い)などのイメージがつきまとう学校のトイレの改善を求める声があったことも調査の要因となった。

また、18年度に文科省が公表した「施設整備による教育環境の向上の効果」では、「学校のトイレに行くことを我慢する」という児童が51%を占め、その理由は1位の「汚くて嫌」に続き、「和式が嫌」が上がった。

 

洋式化「60%」目標

16年当時、兵庫県の洋式化率は46・1%で、最も高いのは西脇市の83・4%。丹波篠山市は28・7%で、下から3番目の低さだった。

同市ではその後、校舎の耐震化などの大規模改修に合わせての工事や、単独工事での洋式化が進んでおり、昨年度末で42・67%にまで急激に上昇。市教育委員会によると、今夏も8校で洋式化を図っており、今年度末には50%台が確実となる。

一方、便器数が少ないという事情もあるが、最も低い小学校ではわずか22・73%にとどまっているケースもあり、今後、順次、工事を進めていくという。

同市教委は、ほとんどの家庭で洋式が主流となっていることや、近年のニーズを受けて工事を進めているが、和式も残しつつ、洋式化率を各校約「60%」にするという目標を掲げている。

それは、「絶対に和式がいい。誰かのお尻が乗った後なんて信じられない」(小学2年生の男児)という意見もあるためだ。別の小学4年生の男児も、「家では洋式。家族ならいいけれど、学校では誰が座っているかわからないので和式がいい」と話す。

市教委担当課は、「世の中のすべてが洋式になれば100%洋式にするかもしれない。しかし、今はまだ和洋が混在している。和式でできるようになることも大切なこと」と話す。

 

クリーナー要望も

同市の隣、丹波市でも、校舎の大規模改修に合わせてトイレの改修を行い、洋式化を図っている。過去には洋式化率の低い学校のトイレ改修を進めていたが、部分的な改修は費用がかさむことなどから、現在は校舎改修時に限っている。

さらに、以前は床がタイル張りで排水溝を備えた「湿式」だったものを、簡単に掃除できて衛生的な「乾式」へと変更している。

以前は、学校によって「和式便器を1つは設置する」方針だったが、家庭での洋式便器の普及を受け、今後のトイレ改修の際は「完全洋式化」を図っている。

一方で、丹波篠山市と同様、和式を残してほしいという要望もあるという。洋式便器に座ることに抵抗がある児童がおり、便座を清掃するクリーナーの設置を求める要望もあった。

丹波篠山市の前川修哉教育長は、「不快感のない教育環境を整えていくうえで洋式化も重要だが、一方で、『学校ではトイレに行きづらい』という子どももおり、『学校でトイレに行くのは恥ずかしいことではない』という意識付けもしていかなければならない」と話した。

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