秋の風物詩「タカの渡り」が、兵庫県丹波篠山市の澄み切った秋の大空で観察できる。
「タカの渡り」とは、繁殖地と越冬地の間を定期的に行き来するタカの生態行動をいう。4―5月頃に繁殖のため、東南アジア方面などから日本へ渡ってきて、えさの乏しくなる冬を前に、9―10月頃、越冬地の同方面などへと帰っていく。
20年間、丹波地域のタカの渡りを調査している丹波野鳥の会会長の梅津節雄さん(65)=同県丹波市氷上町=は、今年もタカの渡りのルートとなっている丹波篠山市内の山の頂付近で定点観察を行っている。
午前中快晴だった9月20日の調査では、「ハチクマ」が数多く観察できたという。ハチを主食にし、翼をひろげると130センチメートルほどになる大型のタカで、午前9時―午後2時の間に約170羽を記録した。山頂付近でカメラを構える梅津さんの近くや、目の高さくらいの位置を次々に飛行したという。
「渡りに適した条件は、雨が降り続いた後の快晴の日。時間帯は、上昇気流が発生し始める午前9時ぐらいから」と梅津さん。「もともと個体数が少なく、あまり目にすることのないタカの仲間を一度に数多く観察できる絶好の季節」と話す。
丹波地域では、ハチクマに続いて9月末頃から「ノスリ」が、その後は「オオタカ」「ツミ」などの渡りが10月下旬まで見られるという。
梅津さんは「毎年決まった時期に地球規模で移動していくタカの渡りは、壮大な自然のドラマを見ているようで、感動を覚えます」と声を弾ませている。